【医師監修】もっと詳しく、やさしく◆幹細胞のはなし③
今まで4回にわたり、ヒト幹細胞の話をしてきましたが、まだまださらりと触れただけで詳しく紹介していない物がたくさんあります。
今日はその中でも知っておいて損がないものをご紹介します。
ヒト歯髄由来幹細胞
ヒト幹細胞培養液というと、多くは脂肪から採取したものですが、歯髄由来の幹細胞もあります。
歯髄とは、歯の内部にある、神経や血管が集まっている柔らかい組織のことです。一般的には「歯の神経」と呼ばれることもありますが、神経だけでなく、血管やその他の細胞も含まれています。
ヒト歯髄由来幹細胞とは、私たちの歯の中にある歯髄という組織から採取される特別な細胞のことです。この細胞は、他の種類の細胞に変化する能力(分化能力)を持っていて、再生医療や美容の分野で注目されています。
ヒト歯髄由来幹細胞をもっと詳しく
歯髄細胞は脂肪に比べ、歯科医で抜いた乳歯や若い人の親知らずなどから作られるため、比較的ドナーの負担が少なく、入手も容易です。
また、歯髄細胞は歯の中心部にあるため、硬い歯の層にガードされているため、遺伝子が傷つきにくく活動性に優れています。
ヒト由来歯髄幹細胞に期待できる効果
期待できる効果はとてもたくさんあります。
とは言え、まだ安全性が確立されていない効果もあるので、一般的な効果をご紹介します。
- ●組織の再生・修復
- ●骨の再生
- ●軟骨の再生
- ●神経の再生
- ●抗炎症作用
- ●創傷治癒の促進
- ●免疫調節作用:免疫系の働きを調整することで、アレルギーや自己免疫疾患の改善に役立つ可能性があります。慢性疲労や肩こりにも効果が期待できます。
- ●美容効果:エイジングケア、加齢によるシミ、しわ、たるみや乾燥などの肌トラブルに効果が期待されています。
- ●毛髪:抜け毛、薄毛、毛髪の再生効果が期待されます。
当社の銀座プロノビセアクリニックでは
ヒト由来歯髄幹細胞培養上清を使った
「エクソソーム点滴療法」をお行っています。
エクソソームとは細胞から分泌される直径わずか1万分の1ミリほどの顆粒状の「細胞外小胞」と呼ばれる物質です。膜に包まれ小さな袋状になっており、細胞間の情報伝達を担い、細胞の機能を調節する働きがあります。
終わりに
今日は、ヒト歯髄由来幹細胞のお話しでした。
ヒト幹細胞培養液は聞いたことがあっても、歯髄由来幹細胞培養液はあまりお聞き馴染みがない人も多いのではないでしょうか。
脂肪から取るヒト幹細胞よりも、歯髄はドナーとなる方に負担が多くなく、入手も安易です。
え、他人の歯の中?とびっくりされるかもしれませんが、それほどヒト由来成分というのは価値があり、効果も高いと言えます。
医療でも、大きな傷を隠すために自身のお腹やお尻の脂肪や皮膚を使って手術することがあるように、人間にとってヒト由来は適合しやすいのです。
当クリニックの点滴療法では、身元のはっきりとしている幼児(主に5~8歳)の乳歯を使用しています。
点滴でなくても化粧品にも多く採用されている成分なので、次回は化粧品に使われるヒト歯髄由来幹細胞のお話をしますね。
本記事の監修は
医学顧問 早川 宏司 先生
996年:日本形成外科学会認定専門医
1997年:大牟田市立病院形成外科部長
1999年:大阪白壁美容外科形成外科部長
2001年:矢永クリニック勤務
2003年:形成外科 白山クリニック開院 院長
日本形成外科、美容外科認定専門医
日本乳房オンコプラスティック学会認定医